日本と台湾の学生シビックテッカーが台北で国際交流プログラムを実施

2024.03.28 | 活動レポート

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Code for Japanの学生向け開発コンテスト(CCC U-22)とg0v台湾の教育関連プログラムsch001で連携し、台湾でのスタディーツアーに10名の学生を派遣しました。

学生のプロトタイプ開発コンテスト(CCC U-22)

Code for Japanでは2020年より毎年夏、学生向けのシビックテック領域特化のプロトタイプ開発コンテストCivictech Challenge Cup U-22(以降CCC U-22)を開催しています。コロナ禍だったこともあり、オンラインでの開催が続き、これまではファイナリストの最終審査会、コンテスト後の海外カンファレンス登壇なども含めてオンラインで実施してきましたが、2023年度ついに対面での最終審査会が実現しました。

g0v台湾の教育関連プログラム(sch001)

CCC U-22と同時期に台湾で始まった教育プログラム「sch001(スクールゼロワン)」も4年目を迎えたことから、国際交流プログラムを行うこととなりました。CCC U-22のファイナリストの学生から英語でのプレゼンテーション発表を条件として有志メンバーを募集し、2024年3月1日から3月3日の3日間、台湾に渡航、現地のハッカソンにてプロジェクトの発表、台湾のシビックテックに取り組む現地学生との交流などを行うプログラムを実施しました。このイベントレポートではその様子をご紹介します。

Day1:NPO HUB Taipei 見学ツアー

台湾到着初日は、台北市中心部に位置するNPO団体向けのオフィススペース、NPO HUB Taipeiのツアーを行いました。施設を運営するImpact HUB Taipeiのスタッフから団体の紹介や社会課題に対する取り組みの紹介を受けた後、実際に使われているオフィススペースや共用スペースなどを回り、施設の使われ方や、単なるレンタルオフィスに留まらないコミュニティづくりの工夫も紹介してもらいました。
NPO HUB Taipeiは、長期間放置されていた高校の寮を台北市政府から借り受ける形で、小中規模のNPO団体向けのオフィス兼居住スペースとしてリノベートしており、居住スペースには学生寮の面影もありました。また、屋上スペースでは、入居団体のコミュニティビルディングとしてBBQなど定期的なイベントが開催されているとのことで、施設の特性を活かした運営を感じることができました。
学生は移動の疲れがある中でもスタッフからの説明に熱心に聞き入り、ツアー後は台湾料理を体験しようということで小籠包組と魯肉飯組の2グループに分かれて食事をとりました。
 
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Day2:プレゼン発表とプロジェクトツアー

2日目は、台湾のシビックテックコミュニティg0vが主催するプロジェクト持ち込み型ハッカソン「Jothon」にて、特別企画として学生のプロジェクト紹介時間を設けていただき、日本の学生がCCC U-22で取り組んだプロジェクトを、台湾学生からはsch001で行っている取り組みについて発表させてもらいました。
JothonはCode for Japanが開催しているSocial Hack Dayの元となったハッカソンで、参加者が自らプロジェクトを持ち込み、それに興味を持った他の参加者が開発に加わるという形の1dayハッカソンです。Jothonは2ヶ月に1回開催されており、毎回100人ほどの参加者を擁しています。
 
 

CCC U-22 プロジェクト発表

日本の学生はどのチームもCCC U-22参加後も新機能の開発や追加検証などの進捗を生んでおり、昨年10月の最終発表会での内容を大幅にアップデートした内容を英語で発表していました。普段から英語で話す機会があるのはごく一部のメンバーのみで、そもそも学外での英語プレゼンは初めてというメンバーも多く、参加者は渡航前からオンラインでの練習会を複数開催し、準備を積み重ねていました。時折原稿を確認しながらもしっかり練習の成果を発揮し、発表が終わると会場は大きな拍手で包まれました。発表後は「上手にできなくて悔しかった」「もっと英語を勉強したい」と意気込む参加者も多く、発音練習アプリや英語のポッドキャストを登録して次のステップに進んでいる様子が見受けられました。
 
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sch001 Demo Day

休憩を挟んで午後は、同じくg0vのプロジェクトであるsch001が主催する学生向けのコンテストのDemo Day(最終審査会)を視聴しました。発表は台湾華語で行われたため、日本からの学生は翻訳アプリUDトークを通して発表を視聴しました。
sch001は学校や教育に関するプロジェクトの運営であり、コンテスト以外にもIT系オンライン授業の無料配布、教師向けのレクチャーなどを行っています。コンテストは今年で4年目で、学生が3ヶ月の開発期間でシビックテックに関わる作品のプロトタイプを開発し、ファイナリストに選ばれたチームがDemo Dayにて最終発表を行います。
またこの日は、世界中のコミュニティがオープンデータに関するローカルイベントを開催するオープンデータデイでもあり、その一環として、CCCとsch001がコラボする形で日本と台湾の学生によるシビックテックプロジェクトの発表が行われました。
Demo Dayで発表された作品のジャンルはゲームからシュミレーション、教育アプリまでとても幅広く、なおかつとても高いレベルで実装を詰めてきていてファイナリストの名にふさわしい発表を見ることができました。

Jothonプロジェクトツアーと開発成果報告

CCC U-22の発表とsch001の発表の間の時間で、Jothonに持ち込まれたプロジェクトについて、各プロジェクトチームのブースを行脚しながら、プロジェクトについて説明を受けたり、質問をしながら対話できる初参加者向けプロジェクトツアーを日本ゲスト向けにも実施してもらいました。これは普段のJothonでもシビックテックにまだ馴染みがない初心者(Newbie)に対するサポートとして行われている取り組みです。各プロジェクトオーナーから企画概要、現状の問題意識や社会実装に足りていない要素などについて説明してもらいました。偽情報対策、環境問題、セルフラーニングなど様々なジャンルのプロジェクトがありましたが、今回のハッカソンは特に災害時の避難情報やインフラの整備など、非常時に備えるプロジェクトが多い印象でした。ツアー後は休憩時間などの隙間時間でそれぞれの学生が個別に興味を持ったプロジェクトに出向き詳しく話を聞いたり、自らのCCC U-22のプロジェクトに関して説明しながらフィードバックやアドバイスをもらったりする場面もあり、世代、地域を超えた「シビックハッカー」同士の交流を通して自分のプロジェクトをアップデートしていこうと前向きに、真摯に取り組んでいる姿が見られました。
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sch001 Demo Dayの後にはJothonの成果報告がありました。この日の取り組みで出てきた進捗についての紹介とそれをお互い励まし合う、称賛し合う時間です。1dayハッカソンとはいえ1日で終わるプロジェクトは少なく、毎回継続して持ち込まれているプロジェクトがほとんどです。プロジェクトを持ち込んだ参加者の中には、かれこれ4年継続してハッカソンに参加している方もいるほどでした。
成果報告をもってこの日のJothonとCCC U-22とsch001のコラボイベントは終了し、日本の学生はsch001のDemo Dayで発表を行った台湾の学生達と交流ディナーの時間を過ごしました。お互いに母語ではない英語での会話に、最初はぎこちなさもありましたが、やがてプロジェクトの話だけでなく趣味や普段の学校生活に関する話、台湾と日本の文化の違いの話など、お互いを知ることで打ち解けていき、食事を食べ終えても飲み物もなくなっても話が尽きず、「友達ができた」と言える程にまでコミュニケーションを取ることができました。
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Day3:台北シティーツアー

3日目はg0v jothonとsch001の皆さんにガイドをしてもらう形で台北市内を観光しました。ランドマークである台北101をはじめとして様々な場所とその歴史を紹介してもらい、最後は台北で人気のオーストラリアスタイルのカフェで送別会を行って解散となりました。2日間しか過ごしていないにも関わらず、学生同士の交流は濃密なものとなり、連絡先を交換したり、記念写真を撮って別れを惜しむほどに仲良くなっていました。sch001の学生から多くのことを学び、また多くのことを共有できたと感じています。参加者の中にはこれが初めての海外渡航、海外の方々との交流という学生もいて、同じアジアに暮らす同世代との交流はとても刺激になったのではないかと思います。
 

帰国後報告会

帰国後、翌週金曜日にCode for Japanのランチ勉強会で「台湾渡航報告会」を実施し、参加者それぞれの視点からの振り返りをLT形式で共有してもらいました。
今回、参加者にとってのメインイベントは2日目の英語でのプレゼン発表でした。なかには緊張している学生もいましたが、1ヶ月前から運営スタッフと共に英語でのプレゼン練習を繰り返し行っており、皆しっかりと発表することができていました。実際に、学生から「想像していたより上手く発表できた」「ディナーでもプロジェクトについて意見交換ができて良かった」などの声が上がっていました。一方でプレゼン発表以外の対話や意見交換など、双方向型のコミュニケーションには課題を覚えた学生も多く、帰国後の報告会では「今後英語の学習により力を入れたい」という声も多く上がりました。
また、Jothonプロジェクトの中で、具体的に起こりうる、もしくは過去に起こった脅威への対策として発足したという経緯の説明を受けたり、街中を散策していて目に入ってきた地下鉄の駅の入り口にあった「防空」の文字などから、「他国からの脅威に日常的に晒されていることによる防災意識の違いや喫緊さを実感した」という学生の感想も印象的でした。
 

編集後記

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私はCCC U-22で運営スタッフを務めており、今回の台湾渡航ではツアーや発表時の学生のサポートスタッフとして同行しました。私は台湾への渡航は初めてで、CCCファイナリストの学生と同じように文化の違いや同世代の学生との交流に大きな刺激を受けました。プレゼン発表に関しても、2020年度のg0v summitではオンラインでの登壇経験があり、発表前に練習を重ねる学生を見ているとどこか懐かしいような気持ちになりました。
また台湾の学生との交流の際には、普段の生活や趣味など、sch001、CCCの参加者やスタッフとして以外の側面を共有することができ、プレゼン発表を見合うだけでは生まれない友情が芽生えました。3日目のランチを終えて別れる時はとても寂しい気持ちになりましたが、次回のFacing the Oceanやg0v summitでまた彼ら彼女らと会えるのが楽しみでなりません。
今回渡航した学生がこの経験を活かして成長してくれれば運営スタッフとしては本望ですし、私自身もこの3日間で得た知見と刺激を糧にして、いちシビックテッカーとして邁進していくつもりです。

関連リンク

  • Civictech Live! 台湾スタディツアー報告会:
    • Video preview

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