人と社会の可能性を信じて取り組む、行政の伴走支援

2025.02.06 | スタッフ

——自己紹介をお願いします

砂川洋輝です。2020年度からCfJにて、GovTech事業やまちづくりにおけるデジタル活用に取り組んでいます。半導体エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後フィンランドに留学してサービスデザインを学び、2021年度からは神戸大学V.Schoolで、デザイン思考を活用し地域課題を解決するためのPBL(課題解決プロジェクト型学習)授業を行っています。
 

——CfJとの出会いについて教えてください

サービスデザインについて学んでいたフィンランドのアールト大学での留学中だった2015年から16年ごろにアメリカでシビックテック活動に取り組むCode for Americaを知り、帰国後にFacebookを見ていた時にCfJが告知していた神戸市職員の募集を見つけました。
留学中に取り組んでいた、『サービスデザイン × 行政』というテーマ、かつエンジニアリングの知見を活かせるキャリアを色々と見ていた時で、当初からシビックテック自体に強い関心があったわけじゃありませんでした。活動に興味を持ち求人に応募したところ、選考に進み、ICT業務改革専門官として神戸市に入庁しました。
神戸市に入庁した2017年当時は行政でのIT人材登用や、DXへの取り組み自体がまだ珍しかった頃で、「業務改善をしませんか?」と各所管課へ聞いてまわりながら働き方改革の啓蒙活動をしていました。ヒアリングをしていく中で、例えば、kintone(キントーン)のようなSaaSなど、業務に合わせたICT技術の導入支援をしたり、他にも案件ベースで具体的なソリューションの提案をしていて、最終年度には生活保護のアプリを作るというサービス開発に取り組みました。
神戸市でのICT業務改革専門官時代のインタビュー記事(2018年)
 
ICT業務改革専門官として活動する中で、CfJの代表の関さんと喋ったり、CfJのサミットに参加したりしていました。ちょうどその頃、子どもが生まれたこともあり、社会についておぼろげに考えていた時期でした。任期を終えるタイミングで、なんとなく「CfJに入りたいんですけど」と関さんに言ったら、「いいんじゃない」ということでCfJで働くことになりました。
CfJ社員として入社が決まった際の記事(2020年)
 
CfJでの担当は、自治体DX・サービスデザイン研修、まちづくりDX伴走支援です。
具体的なプロジェクトとしては、CfJが取り組むテクノロジー活用によるまちづくりのプロジェクト「Make our City」や、PLATEAU(プラトー)を使ったまちづくりDXを推進するためのハンズオン研修など、業務におけるDX推進に役立てていくための知識やスキルを身につけることを目的とした研修プログラムや、 ドローンにより地域の配送機能の維持をめざす配送DX(総務省「令和6年度地域デジタル基盤活用推進事業」の推進体制構築支援を活用した取り組み)など、地域でのDX伴走支援を提供しています。
※PLATEAU:国土交通省が主導しオープンデータとして公開している日本全国の3D都市モデル

——シビックテックに対する考え方は、活動を通じてどのように変化しましたか?

最初からシビックテック推しだったわけではなく、活動を通じて自分のできる範囲で貢献できることがわかってきました。そのきっかけになったのが、入社後から一番長く担当している豊岡市スマートコミュニティの伴走支援です。
まだ入って間もない頃に自治体職員やまちづくり支援団体のスタッフなど、豊岡市の案件の関係者に集まってもらって勉強会を主催しました。その際に、サービスデザインについて自身の経験やスキルについてを話し、共有することが色んな人に楽しんでもらえることがわかりました。
神戸市時代から同僚と機械学習や行動経済学の勉強会を主催していたことはあるのですが、それを地域へ徐々に広げていく感じが、「僕なりのシビックテックや、地域活動なのかな」って少しずつ見えてきました。
その後も、「チャレンジ!!オープンガバナンス(市民や学生と行政が協力し、新しい発想で地域の創造に挑戦するコンテスト)」で高校生に対してフィードバックをして、一緒にプロジェクトをブラッシュアップをするなど、さらにシビックテックの活動に触れていく中で、「自分ができる貢献はこういうことなのね。これでいいんだ」って実感が湧いてきました。

——プロジェクトにおいて、特に大切にしていることは?

プロジェクトの進め方において大切にしているのが、『万が一プロジェクトが途中で終わったとしても、関係者に学びが残るように進める』ことです。
例えば、もともと数年間の計画で始まったプロジェクトでも、リーダーの変更や予算の都合などで、中途半端な形でプロジェクトが終了してしまうことってあると思うんです。そうした形で終わってしまうと「あのプロジェクトは結局何だったんだろう」ってなることありません?
行政の職員や地域の人たちにとって「協力してめっちゃ時間使ったけど、何も残らなかったね」っていう印象で終わってしまうと「次はもうやりたくない」ってなっちゃうじゃないですか。我々が関わる地域の行政プロジェクトでも、そうなってしまうことを見かけます。
僕らのプロジェクトにも、同じリスクはもちろんあって、どこまでできるかがわからない中でも、特に、自治体職員に対する伴走支援では「あの人たちと関わって良かったな」っていう体験や学びを何か一つでも多く残せたらいいなっていうのはすごく意識しています。
 

——大切にするようになった背景は?

例えば、業務が改善されるなど、その問題が解決されることが大前提ですが、まず信頼を得るためには、やっぱり『相手がよかったと思える』ようにするのが重要だなって。
仮にプロジェクトを完遂出来なかったとしても、そこまでの学びとして「砂川さんが面白い話をしてくれた」や、「砂川さんの繋がりでこの人と繋がれたから、まあいっか」って思ってもらうことだったり、もしくは参加した会議自体はすごくつまらなかったけども、例えば、Notta(ノッタ)っていうAI文字起こしツールがすごく便利であることがわかった、みたいな、ちょっとした『お土産』になる体験をめちゃくちゃ重視してます。
一緒にプロジェクトやってて、「あの人と喋ったら楽しい」ってなれたら、 また次も「こんなのできないですか」と声を掛けてもらったり、逆に、こっちがお願いしたときも協力してくれるようになったりします。
別に何かを期待しておすそ分けするわけじゃないんすけど、こっちから先におすそ分けするんです。これは多分CfJの人で共有されている価値観で、多少回り道になったとしてもその分の価値を残そうとしています。

——CfJで共有されている価値観なのですね

CfJのGovTechのチームの取り組みは、平たく言うと行政に対するコンサルタントです。一般的な行政コンサルと同じくゴール達成を目指して動きますが、その達成のプロセスが結構ユニークだと思っています。
行政職員の方々と我々が相互に信頼を築いて、言いづらいことでも指摘したり、プロジェクトの中でお互いが汗をかくようなフラットな関係を目指しています。そのプロジェクトとは直接関係無いことでも、相手にとって有益だと思う情報は随時お伝えしたりしています。
プロジェクト自体は終了した後も、情報交換は継続して「この自治体さんとそこの自治体さん繋げますね」みたいに僕らがハブになることもあります。
もしかしたらこれは「したたかなコミュニティ戦略だ」ってと言われるかもしれないですけど、その役割を他があまりやっていないように感じるから僕らがやっているだけです。僕らのCfJのミッションは「オープンにつながり、社会をアップデートする」なので、逆にその役割がなくても自然とそれができているのならやる必要はないという価値観なんですよね。
サービスデリバリーの枠にとらわれずに、相手と相手の組織にとって必要と思えば、伝えるべきことは伝える、そんな実践をしてる人がCfJには多いと思いますね。

——CfJで働いている人ってどんな人?

社会的インパクトを出したいと思っている人が多い気がします。それぞれ理念は持ちつつも、現実の課題や状況も理解している人が集まっています。理念だけでは何も変わらないし、声をあげるだけでは何も変わらないから、手を動かすことの大切さを共有しています。
あと、基本はオンラインでみんな仕事をしているんですけど、自分ひとりで考えるだけでなく、いろんな人と雑談する中で自分の考えが深まる感覚があります。その辺がすごく居心地がいいですね。

——CfJで働くことの魅力とは?

一番いいのは、多様な価値観と評価の視点があることなのかもしれません。 営利企業のように単一の評価基準に縛られるのではなく、例えば、「短期的に目の前で起こっていることを良くする」、もしくは「長期的に社会に効いてくる」とか、場合によっては単純に「好きだから取り組む」みたいなところも受け入れられるなど、いろんな角度からの観点での評価ができるのは、すごくいいなって。
裏を返せば、そういった曖昧な状態を受け入れるのに全く違和感のない『ネガティブケイパビリティ(不確実性を受け入れる力)』の高さがCfJで仕事をする心地良さにつながっていると感じます。

——CfJの活動には、どんな人が向いていますか?

『半歩踏み出せる人』はいいかもしれないですね。
やっぱり一歩全部踏み出すのは大変だけど「半歩だけ、ちょっと行ってみようかな」って思える人は、それが0.6歩、0.7歩って周りの後押しでバンバン踏み出せると思うんです。その最初の半歩は好奇心と、あとは勇気と面白がり力みたいなとこですかね。
主に行政の案件に対応するGovTechチームのメンバーは、いろんな意味で個性的な人が多いので、私も気づけば色々なところに引きずり込まれている気がします。私自身もほんの少しだけ周りを巻き込んでいる自覚はありますけど。その結果、自分が思いもよらない世界に挑戦することになったりしますけど、振り返ってみると意外と悪くありませんよ。

——将来的に見据えていること、これからチャレンジしたいことは?

将来的に考えているのは、シビックテックの裾野を広げることです。
特に、好奇心ベースで自分の知りたいことを探求する『シチズンサイエンス』との関わりを増やしたいですね。シビックテックという言葉にとらわれずに、もっといろんな人がそれぞれの地域の活動に関わるのがいい気がしています。
市民活動の中には、名前にシビックテックって付いていなくても、シビックテックが目指す世界線に近い活動がたくさんあると思います。その中でシチズンサイエンスは、好奇心から自分の知りたいことを探求、それを実験し、科学していく活動で、そことの関わりが増えたらいいなって。
例えば、料理の科学とか、身近な探求の成果もオープンにしていけたら、オープンデータ的で面白いなって思ってます。シビックテックでの課題解決に限らず、価値創造を目指す中で、いろんな人と意見交換して、シビックテックの可能性を広げていけたらいいなと考えています。

関連サイト

 
 

編集後記 - 明主

CfJで働くメンバー紹介企画として、今回はGovTech事業を担当する砂川さんにCfJでのプロジェクトにおける考え方について聞きました。どんなキャリアを歩んで今CfJで働いているのか、各メンバーによってその経緯は様々です。今回のインタビューでは、経験やスキルが活きる実感を得たのがCfJでの活動で、そこに同じ価値観を共有する仲間がいたのがという砂川さんの話が印象的でした。新しい挑戦をする際に「半歩」踏み出せば、一緒に伴走してくれるのは、CfJでは共通していると私自身も感じます。最後までお読みいただきありがとうございました。
 
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