「自分もいつかは高齢者。だから、自分の住む地域を支えるサービスを作りたい」そんな想いを持ったエンジニアの野津さんが奈良県生駒市の自治会と買い物弱者への配車サービスの実証実験をおこなっています。
「単なる配車サービスではなく、人と人をつなげるサービスにしたい」野津さんと地域の人たちがつくる「いきいきの輪」の過去と現在、そして未来をレポートします!
助け合いの自治会
今回の舞台となる奈良県生駒市の鹿ノ台は、自治連合会を中心とした自治会活動が非常に活発で、全国的にも有名。お祭りや防犯活動、清掃活動はもちろん、音楽祭に緑地整備、認知症カフェなど多くの独自の取り組みがおこなわれています。特に、納涼祭は参加者が6,000人と桁違いの規模を誇ります。
地域の一大イベントの納涼祭
さらに鹿ノ台の自治会は資源回収や自治会所有の車による防犯パトロールまでおこなっています。
青色防犯パトロール車
ご近所さんによる買い物支援
そして、鹿ノ台では買い物弱者に対する支援もおこなっています。
公共交通機関が充実している大都市で生活していると、車が無くても不便なく生活できます。鹿ノ台も坂が多く、車を持っていないと不便な地域。そして、4割以上の住民が高齢者。買い物は地域課題の一つです。
鹿ノ台の買い物支援サービスは、買い物に行きたい高齢者をボランティアが車で送迎や買い物のサポートをおこなっています。30名の高齢者が利用するこのサービスは、高齢者の生活にとって必要不可欠です。
Code for Ikomaの野津さん、登場!
生駒市で活動をしているCode for Ikomaはこれまで食育アプリ「4919」やお天気Twitterなど数多くのサービスを生み出してきました。
鹿ノ台に住むCode for Ikomaのメンバーの野津さんはエンジニア。自治会メンバーとITでできることを話していく中で、買い物支援サービスをシステム化できないかという話しが持ち上がります。
Code for Ikomaのメンバー。左から2人目が野津さん
電話とLINEで実装!
鹿ノ台の買い物支援サービス、実は維持運用がとても大変です。
まず、高齢者は買い物に行きたいときに、自治会の担当者に電話をします。そして、担当者は予定の空いてそうな送迎のボランティアにメールで都合聞いて担当を決めます。最後に、高齢者に送迎が誰になったかを連絡します。考えるだけで、大変ですね…
また、現在の利用者は30名程度ですが、自治体担当者によると潜在的な需要は10倍くらいはあるのではないかとのこと。ますますシステム化の必要があります。
そこで、今回、野津さんが作ったのが買い物弱者とボランティアをマッチングするサービス「いきいきの輪」。まさに、生駒版Uberと言えます。
鹿ノ台住民のいこいの場所「いきいきホール」
しかし、使うのは高齢者。単にアプリを作ってもなかなか使ってくれません。そこで、野津さんが考えたのが電話を活用したシステムです。
高齢者は電話で送迎の希望日を登録します。その希望日はボランティアにLINEやメールで配信されます。ボランティアは、送迎できる日があれば、返信してマッチングは完了。
利用者から丁寧にヒアリングをおこなうことで、実践的な仕様になっています。
実証実験と「いきいきの輪」のこれから
「いきいきの輪」は、現在テスト運用をおこなっています。テスト運用をする中でも、送迎回数をカウントしたいなど、追加機能の要望も出てきています。
野津さんは、システム運用費の捻出にも取り組んでいます。今、考えているのは広告モデル。今後、保険会社などと話し合いと考えています。そして、今後は他地域でもぜひ作って欲しいと考えています。
最後に
これまでいくつものシビックテックのサービスが作られてきましたが、その多くは新しくサービス(アプリ)を作るというアプローチでした。一方、今回ご紹介した「いきいきの輪」は既存の取り組みをテクノロジーによって、より便利にするというアプローチです。そのため、実際に使っている人からのフィードバックをもとに開発を進めています。また、野津さんの住民やサービスに対する想いも強いのが印象的でした。そんな「いきいきの輪」の今後の展開が非常に楽しみです!
今回、ご紹介した「いきいきの輪」以外にもCode for Ikomaでは数多くのサービスが生まれています。
興味ある方は、ぜひイベントなどにご参加ください!
Code for Ikomaプロフィール
活動エリア:奈良県生駒市イベント:毎月定例会、その他に不定期イベント(https://www.facebook.com/pg/code4ikoma/events/ 参照)代表者:佐藤 拓也設立:2014年1月ウェブサイト:https://www.code4ikoma.org/