Code for Japanが50以上の自治体に提供してきた自治体職員向けのデータ利活用研修プログラム「データアカデミー」。今回、データアカデミーの内容が1冊の本になり、発売されました!
データアカデミーとは、データを利活用するためのプロセスを職員が体験するアクティブラーニング型の研修で、データを利活用した政策立案のためのプロセスを学ぶことができます。
今回発売された「データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7 Step」では、「(1)仮説・現状分析(2)対象データ確認(3)分析手法決定(4)分析(5)評価(6)政策検討(7)効果・指標」のステップに沿って説明しています。事例紹介もしており、データ利活用の専門知識が無くても理解することができる内容です。
行政や政治でのデータの利活用は世界的潮流であり、行政職員や議員、研究者から注目を集めています。また、市民対話や市民合意形成のプロセスにも関わってくるため、ぜひ多くの方に本書を読んでいただきたいと考えています。
最後にCode for Japan代表の関からの本書の紹介文を抜粋します。
「サンフランシスコでは1000種類を超えるオープンデータを公開していたけれど、多くはゴミだったわ」
2015年にサンフランシスコ市に視察に行った時に、当時のCDO(チーフ・データ・オフィサー)であるJoy Bonagroさんから聞いた言葉です。当時神戸市のチーフ・イノベーション・オフィサーだった私が、神戸市の視察メンバーと一緒に参加した会議での発言でした。
日本ではこれからオープンデータを本格的に進めていこうというタイミングで、オープンデータ推進戦略や推進体制が、内閣官房や総務省を中心に作られている時期の視察でした。
当時オープンデータで先行していたサンフランシスコ市は、既に次のステージに進んでいたのです。いくらデータ件数が多くても、それが何の意図もなく乱雑に提供されていたり、利用者側のニーズもわからないままに価値のないデータばかりが公開されていても全く意味がありません。データを作るコストも考える必要があります。その一つの解が当時Joyさんが責任者として行っていたサンフランシスコ市のデータアカデミーでした。ただ単にデータを公開するだけではなく、職員自身がデータを活用して仕事を効率化する方法や分析をする方法を学び、より良い政策を作るためにデータを公開して市民や企業と対話を行う機会をデータアカデミーを通じて提供していたのです。
Joyさんが語ったエピソードで印象に残っていることがあります。Joy さん自身が外部登用のCDOとしてサンフランシスコで働き始めた時、市の職員の中には木で鼻を括ったような冷淡な態度を取るような人も多かったそうですが、データアカデミーを通じて職員自身の課題解決にデータを活用することをサポートしたところ、最終的にはそういった敵対的な人ともハグをして成果を喜ぶくらいの関係になれたという話です。
自治体のIT活用と市民コミュニティづくりのサポートを行うCode for Japan は、2014年前後からオープンデータ戦略作りや市民アプリのプロトタイピングなどを中心に自治体をサポートしてきました。しかし、多くの自治体ではそもそもデータに基づいた業務を行なった経験が少なく、前例踏襲型の業務を行っていました。オープンデータの背後にある「データによる組織/部門間連携」というコンセプトを活用できず、なかなか具体的な成果を導くことが難しい状況だったのです。
そこで、サンフランシスコ市のデータアカデミーをヒントに2016年に神戸市で始めたのが、職員向けのデータ活用ワークショップであるデータアカデミーです。その後Code for Japanで内容をブラッシュアップして他の自治体向けにも提供を始めました。内容については、日本の行政の事情に合わせた独自のものになっています。
2017年、2018年と総務省事業の一部として50を超える自治体に対しデータアカデミーを実施した他、独自事業としても60の自治体に展開してきました。結果、多くの自治体で、データ活用を共に行うネットワークが生まれつつあります。本書では、データアカデミーの具体的なプロセスや考え方について、紙面の許す限りオープンに展開しています。
2017年に官民データ活用推進基本法が施行され、行政のデータ活用の必要性が叫ばれています。2019年7月に内閣官房が発表した「新IT戦略の概要」においても、社会全体のデータ活用とデジタルガバメントの推進が重点的な取り組みとしてあげられており、これまで手続き重視・守り重視だった政府のIT戦略は、利用者重視・データ活用重視の攻めの姿勢に切り変わろうとしています。RPAやAI活用といったツールも、既に自治体の業務で使われ始めています。
ただし、データ活用は目的ではなく、手段にしかすぎません。何に使うか?を考えるのは職員自身です。好奇心を持って自分の頭で活用方法を考え、自分の手を動かし、試し、公開し、議論し、改善する。
このような事をポジティブにできる職員が増えれば、各地で色々な事例が生まれるでしょう。
本書を手に取った方が、データ活用という新たな武器を身につけ、ポジティブに公共サービスをバージョンアップしていくことを期待しております。